家を売る際には、まず何をすればいいのかをしっかりと理解することが重要です。初めての家の売却で不安な方も多いと思いますが、今回の記事では、家を売ろうと考え始めた方が知っておくべき売却の方法や注意点を丁寧に解説します。
目次
1.家の売却は情報収集からスタート
家を売る理由は人それぞれです。老後の生活を安心して過ごすために、自宅を売却して資金を得るという選択もあります。しかし、家の売却は一度決断すればすぐに進むものではなく、事前に準備が必要です。まずは、家の売却方法や全体的な流れを理解することから始めましょう。さらに、売却の際にかかる費用や必要書類についても事前に知っておくと、よりスムーズに進められます。
売却を検討し始めたら、以下のポイントを中心に情報を集めましょう。
(1)売却方法の種類
不動産の売却方法にはいくつかの種類があり、それぞれに特徴があります。自分に最も合った方法を選ぶことが重要です。
(2)売却のタイミング
家を売るには適切なタイミングがあります。売却の時期によっては、家が早く高値で売れることもあります。
(3)売却にかかる費用
売却の過程でかかる費用や税金についても把握しておく必要があります。これにより、売却後の収支を正確に見積もることができます。
2.家を売るための具体的な方法
家を売る方法には主に「仲介」、「買取」、「個人売買」の3つがあります。それぞれの方法にはメリットとデメリットがありますので、詳細を見ていきましょう。
(1)仲介
仲介は、不動産会社に依頼して買い手を探してもらう方法です。この方法では、不動産会社のプロが売買のサポートを行ってくれるため、自分の希望に近い価格で売れる可能性が高いです。さらに、専門知識が不要で、不動産会社のサポートがあるため、安心して進められます。
一方で、仲介による売却は、他の方法と比較して売却までの時間がかかることが多いです。不動産会社が買い手を探すのに時間がかかる場合もあるので、その点は考慮する必要があります。
(2)買取
買取は、不動産会社に直接買い取ってもらう方法です。この場合、不動産会社が買い手となるため、買い手を探す手間が省け、スピーディーに売却が進みます。短期間で家を現金化したい場合には、この方法が適しています。
しかし、買取の場合、仲介に比べて売却価格が低くなる傾向があります。これは、不動産会社が買い取った物件を再販する際のリスクを考慮して価格が設定されるためです。
(3)個人売買
個人売買は、不動産会社に依頼せずに自分で買い手を探して売却する方法です。この方法では、仲介手数料がかからず、自分のペースで売買を進められるというメリットがあります。また、納得のいく条件で売却できる可能性もあります。
しかし、個人売買では、すべての手続きや書類作成を自分で行わなければならず、専門的な知識が必要です。そのため、不動産の売買経験がない方にとっては、少しハードルが高い方法といえるでしょう。
3.家が売れやすい時期とは?
家が売れやすいタイミングについては、主に「季節」と「築年数」の2つの観点から考えられます。
(1)季節
1年の中で、最も家が売れやすい時期は不動産市場の繁忙期である1月から3月です。この時期は、新年度に向けた引っ越し需要が高まるため、多くの家が売買されます。売却を検討している場合は、できるだけ早めに準備を始め、この時期に合わせて売却活動を行うと良いでしょう。
(2)築年数
築年数も家の売れやすさに影響します。一般的に、築20年を超える物件は価値が下がる傾向にありますが、それが即売れないというわけではありません。物件の状態や立地条件、価格設定によっては、築年数が古くても売れやすい場合があります。築年数が比較的新しいほど高値で売れる傾向があるので、売却のタイミングは重要です。
4.家を売る基本的な手順
家を売る際には、以下のような手順で進めるのが一般的です。
(1)事前準備
まずは、いつまでに売りたいのか、いくらで売りたいのかという希望を明確にしましょう。住宅ローンが残っている場合は、その残債も確認する必要があります。また、物件概要書や登記事項証明書、固定資産税納税通知書、間取り図、敷地測量図などの必要書類を揃えておくと、売却手続きがスムーズに進みます。
(2)査定
次に、不動産会社に査定を依頼します。査定には、インターネットや電話で簡単に行える「机上査定」と、不動産会社の担当者が実際に物件を見て行う「訪問査定」の2種類があります。机上査定は手軽ですが、訪問査定の方がより正確な売却価格を見積もってもらえます。
(3)販売活動
査定を受けたら、仲介を依頼する不動産会社を選び、媒介契約を結びます。媒介契約には複数の種類があり、それぞれ契約内容が異なるため、自分に合った契約を選びましょう。不動産会社が広告などを通じて購入希望者を募り、売却活動を行います。
(4)売買契約
買主が決まったら、不動産会社を通じて購入申込書を受け取ります。問題がなければ、売主と買主、不動産会社が集まり、契約書に署名捺印し、手付金を受け取って売買契約を結びます。
(5)決済・引渡し
売買契約が成立したら、買主から売買代金の残金を受け取り、物件の引渡しを行います。このとき、固定資産税や管理費、修繕積立金などの精算も行います。
(6)確定申告
不動産を売却して譲渡所得が発生した場合、翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告を行う必要があります。
5.家を売る際に必要になるお金
家を売却する際には、さまざまな費用が発生します。以下に主な費用について詳しく説明します。
(1)家を売るときにかかる諸費用
家を売る場合、不動産会社や司法書士への支払いが必要です。主な諸費用には次のようなものがあります。
①仲介手数料
不動産会社に仲介を依頼する際、仲介手数料が発生します。手数料の額は会社によって異なりますが、法律で上限が決まっており、事務所の見やすい場所に掲示されることが義務付けられています。契約前に確認しましょう。
②登記費用
土地や建物の所有権移転や住宅ローンの担保抹消などに必要な登記費用です。登記手続きは自分で行うことも可能ですが、一般的には司法書士に依頼します。司法書士への報酬は事務所によって異なります。
さらに、引越し代や住宅ローンの残債も考慮する必要があります。住宅ローンを一括返済する場合、金融機関によっては繰り上げ返済手数料が発生することがあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
(2)売却で課される税金
家を売る際には税金が発生することがあります。主な税金には以下があります。
①印紙税
売買契約書などの課税文書にかかる税金で、収入印紙を貼り付けて納税します。税額は文書に記載された金額に応じて変動します。
②譲渡所得にかかる税金
家を売却して得た譲渡所得には「所得税」「住民税」「復興特別所得税」が課されます。譲渡所得とは、不動産の売却によって得た利益のことを指します。譲渡所得にかかる税金は、譲渡所得の額に応じて税率をかけて算出され、売却した家の所有期間によって税率が異なります。
家を売る際には、これらの費用や税金についてしっかりと理解しておくことが重要です。事前に計画を立てて、予想外の費用が発生しないようにしましょう。
6.家を売るために必要な書類
家を売るためには、多くの書類が必要です。以下に、査定時と売却時に必要な書類をまとめました。
(1)査定時に必要な書類
①登記権利証または登記識別情報 | 不動産の所有者を明確にするための書類 |
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②確定測量図、境界確認書 | 隣接する土地の所有者とその境界を明確にする書類 |
③登記簿謄本 | 法律によって定められた方法で作成された測量図 |
④地積測量図 | 法律によって定められた方法で作成された測量図 |
⑤建物図面 | 建物の敷地と建物の位置関係が記載された図面 |
⑥公図 | 土地の形状や位置などを表した公図 |
⑦購入時の売買契約書 | 物件を取得する際にどういった条件で購入したかを表す書類 |
⑧重要事項説明書 | 物件に関する権利や条件など重要項目が記載された書類 |
⑨建築設計図書 | 建物の設計図面 |
⑩住宅性能評価書や耐震診断報告書 | 建物の性能や安全性を評価した書類 |
⑪固定資産税通知書または固定資産評価証明書 | その年の固定資産税の税額や不動産の価格が記載された書類 |
⑫リフォームの実績が分かる書類 | リフォームの箇所や時期などが分かる書類 |
⑬管理費・修繕積立金の記載書類 | 管理費や修繕積立金の額が分かる書類 |
(2)売却時に必要な書類
①固定資産税通知書 | その年の固定資産税の税額が記載された書類 |
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②本人確認書類 | 運転免許証やパスポートなどの本人を証明する書類 |
③実印 | 売却する本人の実印 |
④印鑑証明書 | 各市区町村で登録している印鑑の証明書 |
⑤マンションの管理規約 | マンションに居住するにあたっての規約が書かれている書類 |
⑥総会議事録 | 1年に1度行われる総会の議事録 |
⑦長期修繕計画 | マンションの長期的な修繕計画に関しての情報が載った書類 |
⑧管理に係る重要事項調査報告書 | マンション購入に際して、買主に説明が必要な事項をまとめた書類(管理費や専有部分の使い方などが載っている) |
⑨建築確認済証 | 建物の工事を行う前にその計画が建築基準法に適しているかを証明する書類 |
⑩検査済証建物が建築基準法に沿って建てられたことを証明する書類 |
7.売却前後に注意すべきこと
家の売却は、事前準備から取引後の手続きまで、多くの注意点があります。ここでは、家を売る前、販売中、売却後の各段階に分けて、重要なポイントを解説します。
(1)家を売る前の注意点
家を売る前は、事前準備と査定が主なステップです。ここで押さえておくべきポイントは以下の2点です。
①不動産会社の選定
家を売る際には、複数の不動産会社に査定を依頼することが大切です。会社によって専門分野や得意なエリアが異なるため、査定額や提案内容にも違いが出ることがあります。比較検討を行い、自分に最適な会社を選びましょう。
②媒介契約の内容確認
不動産会社と締結する媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。一般媒介契約は複数の会社に依頼できるのが特徴です。一方、専任媒介契約や専属専任媒介契約では、単一の会社としか契約できませんが、売主への報告義務があったり、レインズへの登録義務があるなどのメリットもあります。売却の目的や物件に応じて最適な契約形態を選びましょう。
(2)販売活動中の注意点
販売活動中は、販売活動から売買契約の締結までの期間を指します。この段階での重要なポイントは以下の通りです。
①内覧の対応
購入希望者が内覧に来る際には、物件の印象を良くすることが大切です。部屋の清掃や整理整頓はもちろん、臭い対策にも気を使いましょう。購入希望者は物件の状態だけでなく、売主の印象も重視しますので、丁寧に対応することが成功への鍵です。
②売買契約書のチェック
売買契約書を取り交わす際には、内容を隅々まで確認しましょう。契約書には売却価格や引渡し日など、詳細が記載されています。口頭での取り決めが契約書に反映されていない場合、後々のトラブルの原因となることがあります。契約前に内容を十分に精査し、確実に合意された内容を文書に反映させるようにしましょう。
(3)家を売った後の注意点
家を売った後は、決済と引渡しが主な作業です。以下の点に注意が必要です。
①引渡し前の準備
売買契約成立後、物件の引渡し前に行うべき作業があります。具体的には、住宅ローンの完済手続き、隣家との境界線確認、契約時に決めた設備の修復や撤去などです。これらの作業を怠ると、買主とのトラブルや違約金が発生する可能性があるため、確実に行いましょう。
②引渡し確認書の作成
引渡し時には、渡した資料や書類を証明できるように引渡し確認書を作成しましょう。後から「この書類は渡されていない」と言われないためにも、確実に記録を残すことが重要です。
③確定申告
家の売却で利益が出た場合、売却の翌年に確定申告が必要です。譲渡所得として課税されるため、所得税・住民税・復興特別所得税が発生します。ただし、特別控除や軽減税率の特例を受けることができる場合もありますので、確定申告を行いましょう。
④売却で利益が出なかった場合
家の売却で損失が出た場合、確定申告の義務はありません。しかし、確定申告を行うことで税の控除や還付などの特別措置を受けられる可能性があります。特別措置を受けるには条件を満たす必要があるため、事前に確認しておくことをお勧めします。
これらの注意点を押さえて、家の売却をスムーズに進めるための準備を整えておきましょう。
8.家を高値で早く売るための秘訣
家を売る際には、できるだけ高く、できるだけ早く売りたいと思うのが自然です。そのために役立つポイントを紹介します。
(1)相場を把握する
家を高く売るためには、まず自分の家の相場を理解することが重要です。相場を把握することで、売り出し価格が適切に設定でき、価格が高すぎたり低すぎたりするリスクを避けられます。売り出し価格と交渉後の最終売却価格には幅があるため、あらかじめ交渉の余地を考慮した価格設定が求められます。相場感をつかむことで、より良い価格設定が可能になります。
(2)信頼できる不動産会社を選ぶ
家を高く、早く売るためには、信頼できる不動産会社を選ぶことが重要です。選ぶ際には以下の点を意識しましょう。
- ①売却物件と似た条件の物件を過去に扱った実績があるか
- ②担当者が親身に相談に乗ってくれるか
(3)家の印象を良くする
家の成約率を上げるためには、物件の印象を良くすることが鍵です。部屋をきれいに整理整頓し、ハウスクリーニングを施すとともに、備え付けの設備のメンテナンスも忘れずに行いましょう。また、ホームステージング(センスの良い家具や小物を使いモデルルームのように演出する方法)も有効です。
(4)価格設定を少し高めにする
売り出し価格は、査定価格よりも若干高めに設定するのがおすすめです。これは、購入希望者との価格交渉を見越してのことです。ただし、売り出してからの価格変更は購入者に不信感を与える可能性があるため、交渉を考慮して設定することが大切です。不動産会社と相談しながら適切な価格を決めましょう。
(5)買取も選択肢に入れる
急いで売却したい場合は、買取を検討するのも一つの方法です。買取では買い手を探す手間が省け、スムーズに売却が進むため、時間を短縮できます。また、仲介手数料が発生しないのが一般的です。ただし、買取価格は仲介での売却価格の70~80%程度になることが多い点に注意が必要です。これは、不動産会社が再販のためにリフォームやクリーニングを行うためです。
これらのポイントを踏まえて、効果的に家を高く、早く売るための準備を整えましょう。
9.特殊なケースの家の売り方
家を売却する際、さまざまな事情がある場合には、それに応じた対策が必要です。相続した家や住宅ローンの残債がある家など、特定の状況に合わせた対策を講じることで、スムーズな売却を実現できます。以下では、こうした状況ごとに気を付けるべき点をご紹介します。
(1)相続した家を売る場合
相続した家を売却するには、まず「相続登記」が必要です。相続登記は、家の所有権が相続人に移ったことを公式に記録する手続きで、土地と建物それぞれに対して行います。これを行わないと、売却が進められません。
さらに、相続した物件には税金の軽減措置が適用されることがあります。たとえば、3000万円の特別控除や、物件を10年以上所有していた場合の軽減税率などがあります。売却前にこれらの措置の適用条件を確認し、税金についても十分に調べておくことが重要です。
(2)住宅ローンの残債がある家を売る場合
住宅ローンの残債がある家は、ローンを一括で返済し、抵当権の抹消手続きをしなければなりません。そのためには、手持ちの資金でローンを完済するか、別途ローンを組む必要があります。ただし、新たにローンを組む際には、返済計画を慎重に立てることが求められます。
もし住宅ローンの返済が困難な場合、「任意売却」を検討するのも一つの方法です。任意売却とは、金融機関の了承を得て、物件を一般市場で売却する方法です。自己資金や売却額を利用しても返済が難しい場合は、金融機関に相談してみると良いでしょう。
(3)古い家を売りたい場合
古い家を売却する場合、そのままでは売れにくいことがあります。そのため、以下の方法から状況に応じた選択をすることが有効です。
①「古家付き土地」として売る | 古い家をそのままの状態で土地と一緒に売却する方法です。 |
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②更地にして売る | 古い家を解体し、土地のみで売却する方法です。 |
③家をリフォームして売る | リフォームを行い、価値を上げてから売却する方法です。 |
④不動産会社に買い取ってもらう | 不動産会社に直接買い取ってもらう方法です。 |
これらの方法については、それぞれの利点と欠点を理解し、自分の状況に最も合った方法を選びましょう。
(4)認知症の親が持っている家を売る場合
認知症の親が所有する家を売却する場合、本人が「意思能力」を持っていないと、通常は売却手続きができません。意思能力とは、自分の行為がどのような結果になるかを理解する能力のことです。
しかし、認知症の進行具合によっては、代理人を立てて売却することが可能です。代理人を立てる際は、本人がその代理人を指名する意思表示が必要です。状況に応じて、早めに動くことが求められます。
(5)離婚による財産分与のため家を売る場合
離婚時に家を売却する場合、売却金を双方で清算するのが一般的です。住宅ローンや養育費が関わる場合は、これらの費用も含めて話し合いが必要です。
(6)住み替えのため家を売る場合
住み替えのために家を売る場合、売却先行(今の家を先に売却してから新しい家を購入する)か、購入先行(新しい家を先に購入してから今の家を売却する)を選ぶことになります。自己資金や住宅ローンの残債を考慮し、どちらの方法が自分に合っているかを検討しましょう。
(7)すぐに現金が欲しいため家を売る場合
現金をすぐに得たい場合は、不動産会社に買取を依頼することで迅速な現金化が可能です。ただし、買取価格は市場価格よりも低くなることが多いので、価格交渉をしっかり行うことが重要です。さらに、リースバックという方法もあります。これは、家を売却後も賃貸として住み続ける方法です。
各状況に応じた適切な対策を講じることで、家の売却をスムーズに進めることができます。自分の状況に合った方法を選び、専門家のアドバイスも活用しながら進めていきましょう。
10.家の売却は慎重に、そしてスマートに進めましょう
家を売るプロセスは多くの手続きと慎重な計画を必要とします。しかし、適切な準備と対応をすることで、高く早く売却することが可能です。必要書類の準備や不動産会社の選定、価格設定など、各段階で注意すべきポイントを押さえて、安心して家の売却を進めましょう。
家の売却は人生の大きな決断です。しっかりと準備し、慎重に進めていくことが成功への鍵です。