リバースモーゲージは、自宅に住み続けながら、その自宅を担保にして資金を借りることができるシニア向けの貸付制度です。この記事では、リバースモーゲージの特徴やメリット、注意点、さらにどのような人に適しているかについて詳しく説明します。
目次
1.リバースモーゲージとは?
退職後、長い老後の生活を考えるとき、多くの人が将来の資金に不安を感じるかもしれません。特に年金だけでは生活費が足りない場合や、退職後の新たな収入源を見つけるのが難しいと感じる人にとって、リバースモーゲージは一つの解決策となり得ます。
リバースモーゲージとは、主に高齢者向けの貸付制度で、所有する自宅を担保にして資金を借り入れ、借り入れた人が亡くなった後に自宅を売却して一括返済するという仕組みです。一般的な住宅ローンとは異なり、月々の返済は不要であり、最後に一括で返済する点が特徴です。そのため、「逆」という意味の「リバース」が名称に使われています。
資金の受け取り方は主に二種類あります。1つ目は融資額を分割して毎月受け取る方法で、もう1つは一括で受け取る方法です。また、返済方法にも違いがあります。月々の利息のみを支払い、借入人が亡くなった後に元金を一括返済する方法と、元金と利息を一括して返済する方法の2種類があります。
2.リバースモーゲージの5つのメリット
リバースモーゲージは、特に老後の資金調達の手段として注目されています。その主なメリットを以下に紹介します。
(1)毎月の費用負担が少ない
リバースモーゲージの大きな利点の一つは、毎月の支払いが軽減されることです。特に、元金と利息を合わせて亡くなった後に一括返済する場合、もしくは毎月利息のみを支払う場合、通常の住宅ローンと比べて月々の支出が少なくなります。これにより、老後の生活費に余裕を持たせることができます。
(2)自宅に住み続けられる
自宅を売却することなく、住み慣れた家にそのまま住み続けながら資金を得られる点も大きな魅力です。引っ越しの手間や新しい住居の確保に伴うストレスを避けることができます。
(3)配偶者への継続利用が可能
リバースモーゲージを利用している場合でも、契約者が亡くなった後に配偶者が住み続けることができる取扱機関が多くあります。これは、配偶者にとっても安心できる点です。配偶者が住み続ける場合、ローンの一括返済は、その配偶者が亡くなった時点で行われることになります。
(4)自己資金の維持が可能
リバースモーゲージを利用することで、退職金や貯金を減らすことなく資金を確保できます。これにより、急な病気や介護が必要になった場合でも、予備の資金を確保しておける安心感があります。
(5)住宅ローンからの借り換えが可能
既に住宅ローンを組んでいる場合でも、リバースモーゲージに借り換えることで月々の返済額を減らすことができます。これにより、退職後の経済的な負担を軽減し、生活に余裕を持たせることができます。
3.リバースモーゲージの6つの注意点
一方で、リバースモーゲージにはいくつかの注意点もあります。利用を検討する際には、以下の点に注意する必要があります。
(1)長生きした場合のリスク
リバースモーゲージは、担保とする不動産の価値によって融資限度額が設定されます。長生きして借入期間が長くなると、融資限度額に達してしまうリスクがあり、限度額に達するとその後の融資が受けられなくなる可能性があります。さらに、金融機関によっては契約期間が設定されていることがあります。契約期間が終了すると、元金と利息を一括で返済する必要があるため、注意が必要です。
(2)利用エリアの制限
リバースモーゲージは、取扱機関や金融機関によって利用可能なエリアが異なります。多くの場合、首都圏や近畿圏の一部に限定されているため、自分の住んでいる地域が対象かどうかを事前に確認することが重要です。 リバースモーゲージは、一般の金融機関や社会福祉協議会で利用できます。社会福祉協議会が提供するリバースモーゲージには地域的な制限はありません。
(3)同居する家族の影響
多くのリバースモーゲージの取扱機関は、「夫婦のみ」または「一人暮らし」の高齢者を対象としています。そのため、同居している子供がいる場合、契約が難しくなることがあります。また、契約の際には相続に関するトラブルを避けるため、推定相続人全員の同意を得る必要があります。
(4)不動産価値の下落による融資額の見直し
契約後に不動産の価値が下がった場合、融資限度額が変更される可能性があります。これは、不動産市場の動向に左右されるため、予想外のリスクとなり得ます。
(5)金利の変動リスク
リバースモーゲージは通常、変動金利が適用されます。そのため、金利が上昇すると毎月の支払い額が増える可能性があります。
(6)団体信用生命保険の非加入
リバースモーゲージでは、通常の住宅ローンで加入する団体信用生命保険に加入することができません。この保険は、契約者が死亡または重度障害を負った場合にローンの残債が一括返済されるというもので、リバースモーゲージではこのような保障がないことに注意が必要です。
4.取扱機関による融資内容の違い
リバースモーゲージを取り扱う機関には主に社会福祉協議会と一般の金融機関があります。それぞれの機関によって提供される融資の内容が異なるため、しっかりと比較検討することが重要です。
(1)社会福祉協議会のリバースモーゲージ
社会福祉協議会は、主に生活に困窮している高齢者を対象にリバースモーゲージを提供しています。毎月の利息を払う必要がなく、相続人が借入金と利息を合わせて一括返済する仕組みとなっています。さらに、融資された資金は生活費に限定されており、1か月あたり最大30万円までの範囲で提供されます。対象となるのは、基本的に65歳以上の非課税世帯などの低所得者です。
(2)金融機関が取り扱うリバースモーゲージ
金融機関が取り扱うリバースモーゲージは、主に「リバースモーゲージ型住宅ローン」と「各金融機関が独自に提供するリバースモーゲージ」の2種類に分類されます。これらのリバースモーゲージには、それぞれ異なる特徴や契約方法が存在します。借入限度額は、担保にされる不動産の評価額に基づいて決定されることが一般的で、通常、その評価額の50〜60%程度が上限となります。
① リバースモーゲージ型住宅ローンリバースモーゲージ型住宅ローンは、住宅金融支援機構の「リ・バース60」を基にした商品です。「リ・バース60」は、満60歳以上の方を対象にした住宅ローンで、多くの金融機関がこれを基にした商品を提供しています。一部の金融機関では、50歳以上から利用可能な場合もあります。
このタイプのローンでは、契約者は毎月利息のみを支払い、元金については契約者の死亡後に返済が求められます。また、借入金の使用用途は、以下の5つに限定されています。
- 本人が住むための住宅の新築・購入
- リフォーム費用
- 高齢者向け住宅への入居一時金
- 既存の住宅ローンの借り換え
- 子世帯などの住宅取得資金
このように、資金の用途が限られているため、計画的な利用が必要です。
② 金融機関独自のリバースモーゲージ各金融機関が独自に提供しているリバースモーゲージは、「リ・バース60」とは異なり、資金の用途が比較的自由であることが特徴です。事業用資金や投資目的を除けば、様々な使い道が認められています。例えば、老朽化した住宅の建て替えや中古住宅購入後のリフォーム費用なども融資対象になります。また、利用可能な年齢についても金融機関によって異なるため、事前に確認が必要です。
③ 契約方法の種類金融機関が扱うリバースモーゲージには、大きく分けて「リコース型」と「ノンリコース型」の2つの契約方法があります。それぞれ、契約者が亡くなった後の債務処理に違いがあります。
(ア)リコース型リコース型のリバースモーゲージでは、契約者が亡くなった後、担保にした住宅や土地の売却代金で借金を返済します。しかし、売却代金だけでは返済しきれない債務が残った場合、その不足分は相続人が引き継いで返済する義務があります。
(イ)ノンリコース型一方、ノンリコース型のリバースモーゲージでは、契約者が亡くなった後も、売却代金での返済が不足していた場合、その残りの債務を相続人が負担する必要はありません。このため、相続人にとっては負担が軽くなる反面、金利がリコース型に比べて高めに設定されていることが多いです。
5.リバースモーゲージが向いている人
リバースモーゲージはシニアの資金調達の一つとして利用されていますが、どのような人に適しているのでしょうか?以下の条件に当てはまる方に向いています。
(1)老後の資金に不安がある方
資産価値のある住まいを持ちながらも、老後の生活資金に不安を感じている方には、リバースモーゲージが有効です。自宅を担保に資金を得ることで、生活の安心感を高めることができます。
(2)老後の資金はあるが予備資金を残したい方
老後の資金に困っていないが、病気や介護の可能性に備えて現在の資金を温存したい方には、リバースモーゲージが適しています。この方法で資金を調達することで、既存の資金を別の目的に留めておくことができます。
(3)相続人がいない方
自宅を相続する必要がなく、遺産を残さない方にも向いています。自宅を資金源として利用し、必要な資金を確保できます。
(4)老人ホームの費用が必要な方
老人ホームに入居予定で、自宅を手放さずに入居費用を確保したい方に最適です。リバースモーゲージを利用すれば、一括でまとまった資金を得ることができ、その資金を入居費用に充てることが可能です。
6.自分に合った方法をよく検討しよう
リバースモーゲージは、老後の資金調達の手段として有用ですが、その利用には一定のリスクも伴います。利用を検討する際には、資金計画や家族との相談をしっかりと行い、自分にとって最適な方法かどうかを見極めることが重要です。また、リバースモーゲージの取扱機関や融資内容をよく比較し、信頼できる機関を選ぶことも大切です。
最後に、自分のライフプランや家族の状況に応じて、リバースモーゲージが本当に適しているかどうかを慎重に検討してください。老後の生活をより豊かにするために、正しい選択をすることが何よりも重要です。
リバースモーゲージについて理解を深め、将来の資金計画に役立ててください。