リースバックとは?後悔しないためのメリットと対策をやさしく解説!

リースバックとは、不動産を売却したあとも、もとの所有者がその物件を借りて引き続き住み続けられる仕組みのことです。とくに、自宅を売って現金化しつつも、住み慣れた家にそのまま暮らせる点で注目されています。

本記事では、リースバックの仕組みや活用メリット、後悔しないための注意点について、分かりやすく解説していきます。

1.リースバックとは?

リースバックとは、不動産を売却した人が、買い取った相手(リースバック事業者)と建物賃貸借契約を結び、引き続きその物件に住み続けられる仕組みです。自宅を売却し現金化した後もそのまま暮らせるため、以下のような悩みを抱えている方には、有効な選択肢となり得ます。

  • 住宅ローンの返済が重いが、家を手放したくない
  • 老後の生活費を確保したいが、住み慣れた家には住み続けたい
  • 急な資金が必要だが、引っ越しは避けたい

リースバックは自宅を売却するという大きな決断が伴うため、不安や迷いを感じる方も多いでしょう。この記事では、リースバックの仕組みと活用のメリット、そして後悔しないためのポイントを丁寧に解説します。

2.リースバックの仕組み

リースバックは「セール・アンド・リースバック」とも呼ばれ、自宅を一度売却し、買主と建物賃貸借契約を結ぶことで住み続けられる仕組みです。

流れとしては以下のとおりです。

  1. リースバック利用者(居住者)が自宅をリースバック事業者に売却
  2. リースバック利用者(居住者)とリースバック事業者は建物賃貸借契約を結ぶ
  3. リースバック利用者(居住者)は売却後は家賃を支払いながら住み続ける

買い手となるのは不動産会社やファイナンス会社などのリースバック事業者で、多くの場合、売却代金は一括で支払われます。売主は、建物賃貸借契約により同じ家に住み続けられるのが特徴です。

3.リースバックのメリット

リースバックには次のようなメリットがあります。ひとつずつ確認していきましょう。

① 住み慣れた家にそのまま住める
通常の不動産売却では、家を手放すと引っ越しが必要になります。しかしリースバックなら、売却後も今まで通り暮らせるため、生活環境を変える必要がありません。周囲に売却の事実を知られることも少ないため、プライバシーも守られます。

② 所有にかかるコストがなくなる
固定資産税や修繕費、火災保険料など、不動産の所有には多くの維持費がかかります。リースバックにより所有権を手放すことで、こうした費用負担から解放され、毎月の家賃だけで済むようになります(※家財の火災保険や敷金・礼金は必要な場合あり)。

③ 所有に伴うリスクがなくなる
自然災害や老朽化、金利上昇など、不動産を所有することで生じるリスクを回避できます。リースバックであれば、所有者ではなくなるため、これらの不安から解放されます。

④ 借金せず資金が得られる
老後の資金や急な出費にも対応でき、住宅ローンを組み直すことなく、まとまったお金を確保できます。しかも、得た資金に使い道の制限はありません。

⑤ 現金化がスピーディー
一般的な仲介による売却では現金化までに数か月かかることもありますが、リースバックは事業者が直接買い取るため、比較的短期間で資金化が可能です。

⑥ 住宅ローンの完済が可能に
住宅ローン返済が困難になった場合でも、リースバックを利用して家を売却することで、住宅ローンを完済できれば、住宅ローンの不安から解放されます。

⑦ 将来的に買い戻せる可能性がある
一定期間内に契約金額を支払えば再び所有権を取り戻せる「買戻し特約」がつけられるケースもあります。ただし、家賃の滞納など契約違反があると買戻し権を失うことがあるため注意が必要です。

4.後悔しないために知っておきたいポイント

リースバックには多くのメリットがありますが、注意すべき点もあります。納得したうえで活用するために、以下のポイントを押さえておきましょう。

  • ① 売却価格が相場より安くなることが多い
    リースバック事業者は将来の売却を想定しているため、買取価格は市場価格より低くなる傾向があります。仲介による不動産査定価格と比較して判断しましょう。
  • ② 所有権は失われる
    売却後は家の所有権がリースバック事業者に移るため、相続したい・させたい場合は家族で十分に話し合う必要があります。
  • ③ 毎月家賃が発生する
    家賃は地域や物件の条件により異なりますが、売却額が高いと家賃も高くなることに注意が必要です。売却前の交渉は慎重に行いましょう。
  • ④ ローン完済が前提条件
    売却代金で住宅ローンを完済できない場合、リースバックの利用は難しくなります。完済可能かどうか、事前に資金計算を行いましょう。
  • ⑤ 永続的に住めるとは限らない
    「定期借家契約」の場合、契約期間終了時には再契約されない限り退去が必要です。長く住みたい場合は「普通借家契約」を選びましょう。
  • ⑥ 保証人が求められる場合がある
    連帯保証人が必要なこともあります。用意できない場合は保証会社の利用が必要になり、別途保証料が発生します。
  • ⑦ 譲渡益に税金がかかることも
    売却により利益(譲渡益)が発生した場合は、税金が課されることがあります。3,000万円特別控除などの適用有無についても事前に確認しましょう。

5.トラブルを防ぐには?

リースバックには、住宅ローンの支払いが不要になる、まとまった資金が手に入る、住み慣れた家に住み続けられるといったメリットがありますが、契約後に予期せぬトラブルが起きるケースも少なくありません。よくあるトラブルの例は以下の通りです。

  • リースバック後の家賃が高額で、支払いが困難になった
  • 建物賃貸借契約が更新されず、退去せざるを得なくなった
  • 契約更新時に家賃を値上げされた

こうしたトラブルは、賃貸条件を定める「新たなオーナー」に権限があるために起こります。回避するためには、以下のポイントを事前に確認・交渉することが重要です。

  • 賃貸借契約の種類(普通借家契約か定期借家契約か)
  • 家賃額・更新時の条件
  • 契約期間や解約条件

さらに、リースバックの相談時点で、買主であるリースバック事業者が信頼できるかをしっかり見極めることも、成功のカギとなります。

6.リースバックの流れ

リースバックの手続きは、以下のような流れで進行します。

  1. リースバック事業者に相談
  2. 物件の査定
  3. 買取金額とリースバック条件の提示
  4. 売買契約の締結
  5. 売買代金の決済
  6. 建物賃貸借契約の締結(賃貸入居開始)
  7. 家賃の支払い開始

手続きにあたっては、不動産権利証(登記識別情報)、住民票、印鑑証明書、本人確認書類などが必要です。事業者によって必要書類が異なるため、事前にしっかり確認しておきましょう。

7.他の資金調達方法との比較

不動産を活用した資金調達には、リースバックの他にも以下の方法があります。

① リバースモーゲージ

自宅に住み続けながら、家を担保にしてお金を借りる仕組みです。以下の特徴があります。

  • 毎月の返済は利息のみ
  • 死亡後に自宅を売却して元本を精算
  • 利用は60歳以上が主流
  • 資金使途に制限がある場合もある
  • 相続人の同意が必要なケースあり

家を手放さずに資金調達したい方に適していますが、死亡後に借りた資金を返せなければ、家を相続できない可能性があるため、家族の理解も必要です。

② 不動産担保ローン

こちらも自宅などの不動産を担保にするローンですが、一般的なローンとしての性格が強く、以下のような特徴があります。

  • 資金用途は自由
  • 金利は1~15%程度(リバースモーゲージより高め)
  • 融資額が比較的多い
  • 元金+利息を毎月返済する必要あり
  • 返済不能になると不動産が競売にかけられるリスクあり

まとまった金額が必要で、安定収入がある人に向いています。

8.リースバックを検討するなら売却相場を知ろう

リースバックは、「住み続けながら資金を得る」手段として有効ですが、売却価格は通常の市場価格より低くなる傾向があります。納得のいく取引を行うには、まずご自身の家の売却相場を把握しておくことが大切です。

以下のような方法で相場を確認できます。

  • 不動産ポータルサイトで類似物件の価格をチェック
  • 不動産会社のホームページを確認
  • 国土交通省の「レインズマーケットインフォメーション」や「土地総合情報システム」を活用

「売却」「リースバック」「賃貸として貸し出す」といった選択肢を比較し、もっとも自分の状況に合った方法を選びましょう。